GRAILに100km乗ってみてのインプレ/レビューをまとめています。また、CANYONの他のバイクと比べてGRAILのジオメトリの特殊さについても考察していきます。
はじめに
皆さまおはようございます。
今回はGRAILで実際にしばらく走ってみてのインプレッションをまとめます。
加えて、CANYONの他のロードバイクとGRAILを比較し、ジオメトリの面からGRAILの特性を探っていきます。
「ジオメトリの細かい数字なんて興味ないよ!」という方にでも気軽に読んでいただけるよう、重要な3つだけの数字を比較し、わかりやすいように簡素化して説明します。
また記事は前後半の2つに分け、後日投稿する後半では
今まで当ブログでレビュー記事を書いてきた
・中華パワーメーター XCADEY
・チューブレスレディタイヤ WTB exposure 30
の実走レビューも書いていこうと考えています。
GRAILで100km走ってみた
先日、GRAILで約100kmの軽い実走をしてまいりました。
今さら実走レビュー?と思われる方もいらっしゃると思いますが、
実は 私は豪雪地帯在住なため、つい最近まで周りの路面はブラックアイスバーンもしくは雪原オフロードとなっておりました。
ですのでしばらくはスパイクタイヤのMTBをメインにして、GRAILが乗れるようになる季節を待っておりました。
(↑この冬の記録。このときは4泊5日の雪上ツーリングをしていました。)
ここ数週間ですっかり雪も溶けたため、満を辞してGRAILに乗ることができるようになりました。
ある日は輪行して海岸線へ。距離としては50kmしか走っていませんが。
適当にオフロードもいくらか走りました。
未だに合計300kmほどしか乗れていませんが、先日の100kmでGRAILのインプレが固まってきたので、ここで紹介することにいたします。
ジオメトリから読み解く、GRAILというグラベルロード
先に結論を言ってしまいます。
100kmを走り終えたあと、「上半身が全然疲れないバイクだな」という感想を持ちました。
このようなインプレになった原因は何なのか、その秘密をGRAILのジオメトリから解き明かしていきます。
グレイル, インフライト, エンデュレース どれを選べばいい?
CANYONはGRAILの他にも様々な自転車を販売しており、ロードバイクカテゴリーには5種類のバイクがあります。
ロードレース向けのロードバイクには、
純レース オールラウンダーのULTIMATE、近年流行りのエアロロードのAEROADがあります。
この2つはプロのロードレース選手が使っています。
去年の世界選手権で、バルベルデはULTIMATEに乗って優勝しました。凄い。
これらはレース機材のため、レースでより速くゴールするために開発されています。
さて、ここで残った3つのロードバイク、
GRAIL, INFLITE, ENDURACE の区別には少々戸惑います。
これら3つのバイクは、
・太めのタイヤを履くことができる
という点で共通しています。
( GRAIL / INFLITE / ENDURACE : 44mm / 38mm / 32mm )
ですのでこれら3つのバイクはひとまずみな
・ロングライド
・グラベルライド
・ツーリング
という用途に用いることが可能のように思えます。
メーカーとしてのこの3つの区分分けは
・GRAIL : アドベンチャー (グラベルを走る安定性重視)
・INFLITE : シクロクロス (CXレースの速さ重視)
・ENDURACE : エンデュランス (より遠くまで走る快適性重視)
となっています。
それでは、この中でGRAILはどんな作り分けがなされ、どのような特性を持ちうるのでしょうか?
ここではジオメトリを比較することで、GRAILのよさを発見していきます。
こちらがCANYONのジオメトリー表です。
まずは
①ホイールベース (上記 H)
についてみていきます。
ホイールベースとは前後のホイール間の長さのことです。
Mサイズでそれぞれ比較すると、
GRAIL > INFLITE >> ENDURACE
1029 > 1018 >> 990
となります。
GRAILが圧倒的に長いですね。
ホイールベースが長くなればなるほど、
・直進安定性が向上
します。
どういうこと?という方にもイメージしやすいように言い換えると、両手放し運転が簡単になる、ということです。ハンドルを固定しなくてもまっすぐに進んでくれます。
(逆に、ホイールベースが短くなるとハンドルがクイックになるので小回りが効くようになります。
例えばホイールベースが短いミニベロ(小径車)では、その場で90°回転するのも容易です。)
また、ホイールベースが長いと
・乗り心地がよくなる
ことも挙げられます。
簡単な図を描きました↓
このように、ホイールベースが長いと段差による振動幅が小さくなります。これにより、悪路でもより安定した乗り心地になります。
(ちなみに、ENDURACEは安定性をウリにしているだけあってこの990mmという長さでもロードバイクとしては十分に長いです。
INFLITEがGRAILとほぼ同じくらい長い理由は、シクロクロスの競技性にあります。CXレースのコースでは、ハンドルが取られやすい路面を走ることになるからです。)
お次は
② スタック+ & リーチ+ (下記 M&N)
です。
これは乗車時の姿勢に大きく関わってきます。
特にこの3車種はシート角(F)が同じ(73.5°)ですので、このスタックとリーチの値を比較することで簡単に乗車時の姿勢の違いを考えることができます。
(スタック+)
ENDURACE >> INFLITE ≧ GRAIL
681 >> 664 > 660
となっています。
スタックとは超簡単に言ってしまえばハンドルの高さです。
ハンドルが高ければ高いほど、ライダーとしては楽な姿勢となります。
(リーチ+)
INFLITE ≧ GRAIL ≧ ENDURACE
460 > 458 > 456
これは3車であまり変わらないですね。
リーチとは、これまた簡略化して表すとハンドルの近さです。
(ハンドルが近い = 上体を起こして乗る) ということになるので、リーチ長が短いほどアップライトな姿勢になります。
以上のスタック&リーチから考えると、一番アップライトなポジションとなるのはENDURACEになりそうですね、この中でもっとも楽な姿勢を取ることができます。
GRAILとINFLITEの違いはほとんどなさそうです。
最後は
③BBオフセット (BB下がり)
です。
上のジオメトリー表にはありませんが、BBの高さとハブの高さの差を表します。
言い換えると、BBの位置が地面からどれだけ高いところにあるのかを表します。
(BBオフセット)
GRAIL > ENDURACE >> INFLITE
75 > 73 >> 64
GRAILとENDURACEが同程度に長く、INFLITEがかなり短くなっています。
(BBオフセットが長い = BBが地面に近い) ということなので、GRAILやENDURACEのBBは地面に近く、INFLITEのBBは地面から離れた高さにあるということがわかります。
BBの位置、すなわちクランクの位置が低ければ低いほど、低重心になるので安定性が向上します。
逆にBBの位置が高い場合は、安定性は悪くなりますが高重心によって反応性が上がり、加速しやすくなります。
(この3つの中でINFLITEは唯一レース用機材なので、加速の反応性が必要というわけです。
それだけでなく、CXレースは障害物の多い悪路で行われるためにクランク位置を高くして障害物との接触を防ぐ目的もあります。ですので、大体のメーカーのシクロクロス車のBBオフセットは、INFLITEのように短く設定されています。)
結論
以上3点のジオメトリ比較において、GRAILがもっとも
・直進安定性に優れる
・低重心で安定性大
であることがわかりました。
ポジション的にはENDURACEが一番アップライトで疲労を軽減できそうです。
しかし、オールラウンドロードバイクであるULTIMATEの (スタック+ & リーチ+ = 653 & 475) と比べれば、十分GRAILもアップライトな姿勢を取っていることがわかります。
実際に100km乗ってみて感じたこと
私が今まで乗ったことのあるロードバイクは、GRAILよりもレース向きのジオメトリをしたものばかりでした。
ですので、上で述べたようなジオメトリの差は乗ってみてすぐに感じることができました。
・まずはっきりとわかったのはホイールベース長による直進安定性です。
GRAILに乗って最初は「思ったように曲がらない」という感想を持ちましたが、それこそが直進安定性だったのだと思います。
クイックなカーブができず、なんだかもっさりしたハンドリングのように感じ、結構違和感があったのですが、これはこれで高速巡航をしてもハンドルがブレなくて良いものだと思うようになりました。
特に坂の下りなど、スピードが出てハンドルが取られないようにする必要がある場面では、この直進安定性はかなり安心できるものでした。
・他に大きく実感できたのはアップライトなポジションによる疲労感の軽減です。
100km走り終えて、手や腕、肩が全く疲れていないことに気がつきました。
特に今回はグローブもせずに素手でブラケットを握っていたのでそれなりに疲労していてもおかしくないはずですが、出発時と大差ないコンディションをキープしていました。
おそらく、従来より上半身が起き上がったポジションをしていたため腕にかかる体重が小さくなったからであると考えます。
肩の筋肉や背筋・腹筋の使用率が下がったことにより、筋肉の疲れが軽減されたというわけです。
この記事の最初に書いた「上半身が全然疲れないバイク」の真相は、主にこの2つが原因なのでしょう。
直進安定性が高かったことも、ハンドルを握る力が弱く済んだことで結果的に腕から肩にかけての筋肉をセーブできたのだと思います。
(参考) ジオメトリの考察について
ジオメトリが及ぼす影響はこの記事で書いたような単純なものではなく、私自身よくわかっていな部分がかなりあります。
(同じ自転車のフレームなのに、SサイズよりもMサイズの方がスタックが短くなる場合がある、など)
ですので今回のジオメトリ比較の内容は、必ずしも当てはまることではありません。
もしジオメトリに詳しい方がいらっしゃれば、私も色々お話を聞いてみたいです。
おわりに
今回はここまでです。
X-POWERやexposure 30のレビューは次回の記事で行います。
100kmで上半身が疲れなかったとは言え、ペダルを踏む太ももの疲労は相応にありました。
冬の間に走れなかった遅れを少しずつ取り戻して行く必要がありそうです。
ちなみに、今週は数日後に200kmほど走る予定をたてています。
200kmは100kmと異なり、ただ走るだけでも全身に疲労が溜まりがちなので、GRAILのより新しい発見ができるかもしれません。
それでは当ブログに興味をもち、記事をここまで読んでくださった全ての皆さんに、
ありがとうございます!またお会いしましょう!
(追記: 2019/04/11)
以下はこの記事の続きです。合わせてお読みください。
(追記ここまで)
(追記: 2019/03/19)
コメントでご指摘をいただいた通り、②スタック&リーチの項にいくつかの間違いが散見されたため、修正させていただきました。
(追記ここまで)