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エベレスティング達成!見えてきたベストな準備や装備

エベレスティング 成功

一回のライドでエベレストの標高を登り切るエベレスティング。その挑戦をクリアした振り返りと、それまでの準備や装備の詳細を報告します。

今後チャレンジする人の参考になれば幸いです。

 

はじめに

皆さまおはようございます。

9月前半はエベレスティングについての記事にお付き合いいただきありがとうございました。

 先週ついにチャレンジを敢行いたしまして、結果は無事エベレスティング達成という形で終わらせることができました。

エベレスティング 提出

Everesting.cc にデータを提出し、現在は承認を待っている状態です。

データに問題はなさそうなので、そのうち無事に承認されて日本で54番目日本人としては(おそらく)34人目ホールオブフェイム、つまり殿堂入りになると思われます。

話題になっているわりには、意外と日本の挑戦者はまだまだ少ない印象です。

(本来なら承認を受けてから記事にしようと考えていたのですが、1週間も音沙汰なしのため、後日追記という形にさせていただきます。)

 

入念な準備で難易度のグッと下がったエベレスティングに

それでは実際にエベレスティングをやってみての感想ですが、最も大きく感じたのは準備がいかに大切かということでした。

エベレスティングを達成する要素が  [準備]:[走力] : [精神力] の3つだとするならば、その重要度は [準備] 4:[走力] 2: [精神力] 4 くらいの配分だったと思います。

もちろん準備がなくとも走りきれる人も十分に多いとは思いますが、難易度を大きく下げることができると考えれば、適切な準備をするに越したことはないでしょう。

 

準備の要:ルート選び 

ヒルクライム ルート

最も大切だったのは、この事前のルート選びであったことは間違いないでしょう。

9月中は「どの道、どの区間を使ってエベレスティングをするか?」ということを常に考えながら様々なルートを試走してきました。

 

斜度は緩すぎてもダメ

傾斜がキツすぎるルート筋力・持久力的により大きなエフォートが必要になります。かといって緩すぎても結果的に総走行距離が伸びてしまうだけなので、精神力や睡魔との対決要素が強くなってしまいます。

平均勾配 7%のルート → 総走行距離 254 km

平均勾配 6%のルート → 総走行距離 295 km

平均勾配 5%のルート → 総走行距離 354 km

平均勾配 4%のルート → 総走行距離 442 km

基本的にはこの斜度と走行距離の関係値を参考に、自分の脚質体力に合わせた一番良さげな斜度を選ぶと良いでしょう。

総距離が伸びれば伸びるほど総時間は長くなると考えて良いので「一睡もしてはならない」というエベレスティングのルールを守ることができるよう、むやみやたらに緩いコースを選ばないことが大切です。

斜度 エベレスティング

私の場合、脚の筋肉量が多いほうではなく、持久力に特化しているタイプの脚質だと自己評価し「斜度は控えめ・距離で稼ぐ」という狙いの「勾配 4.8% → 距離 360 km」のルートに設定いたしました。

結果として筋肉疲労でバテてしまうことなく完走できたので、この斜度選択は間違っていなかったのだと感じました。

 

交通量が少ない小道を選びたい!

選べるのなら、なるべく車の交通量が少ないところを走りたいものです。

特に大型車・トラック等が輸送路に設定しているような主要幹線道路は、夜間の安全性を考えると避けたい要素となるでしょう。

夜間 エベレスティング

そしてやはり一日中走り続ける上では、可能な限りストレスを排除したいところです。その観点からも交通量の少なさは重要な要素と言えるでしょう。

また、市街地に面したルートでは歩行者(特に子供)の飛び出しや、脇道からの右折&左折車に常に注意を巡らせていなければいけなくなってしまうため、できれば付近に民家の少ない山間部の小さな道を選びたいところです。

 

③補給ポイントはコンビニ? →トイレ付き駐車場が最強!?

さて、ルート選びにおいてエベレスティングの達成に最も寄与したのはこの補給ポイントの配置です。

例えばこのような道でエベレスティングをする場合、どの区間を走り、どこを休憩地点とすべきか考えてみましょう。

エベレスティング ルート選び 考え方1

一番考えやすいのは、この「麓のコンビニ〜山頂まで」の区間でしょう。

エベレスティング ルート選び 考え方2

しかし、コンビニ付近の斜度が緩いために「走行距離に対して獲得標高を稼ぐ」という面では無駄が多く、数十回もの往復によって生まれるタイムロスは相当なものになってしまいます。

それでは、次はコンビニまで行くことをやめて「中腹の駐車場〜山頂まで」というコースを考えてみましょう。

エベレスティング ルート選び 考え方3

このルートは山間部の勾配の大きな区間だけを切り取って往復するため、「獲得標高を稼ぐ」効率はピカイチです。

理論上の総走行距離、あるいは総時間を最も短くすることができます。

しかし往復回数が明らかに増えるため、「体力・筋力の回復に充てるダウンヒルの時間が小刻みになる」「休憩地点に立ち寄る回数が自然と増えてしまう恐れ」がある点が少々ネックですね。

単調な繰り返しの数が増えると、精神的疲労の蓄積に心がやられます。(体験談)

精神力さえ盤石であれば何の問題もないのですが、やはり夜通し登り続けるという普段と全く異なる状況に心は摩耗すること間違いありません。

 

ですので、理想としては以下のような区間設定をするのがベストでしょう。

エベレスティング ルート選び 考え方4

ルートの途中に休憩ポイントである駐車場を配置し、一定水準以上の傾斜がある範囲まで下り、そこから引き返します。

これにより往復回数を最小限にして精神的負担を軽減しつつ、斜度をキープして総走行距離の最小化に近づけることができます。

 

④自分のクルマを補給地点にすると、反則級にラク!

でも、駐車場よりコンビニのほうが補給ポイントとしては有利じゃない?」という声が聞こえてきたので、ここでチート級なテクニックを使います。

それは「駐車場に自分のクルマを置き、補給食やドリンクをそこから補充する」という方法です。

エベレスティング 補給食

今回実際にクルマに積み込んで行った補給食たちです。あらかじめこれらを購入しておくことでコンビニに寄る時間の節約にもなりますし、カロリーの消費ペースも把握しやすくなります。

(最近とくにお気に入りのおやつカルパス。まとめ買いして補給食にしています。プロテインの補給にもなり、塩分も摂れて、安い。おすすめです。)

 

そしてクルマがあるということは、エンジンをかければモバイルバッテリーを充電できるということです。それによりロードバイクに積載するバッテリーを軽量なものにすることができます。

また、昼夜の温度変化に対応するための長袖ウェアジャケットその他着替えをいくらでも積んでくることができるので、サドルバッグ等の容量を気にする必要が無くなります。

衣服やタオルは嵩張るものなので、これで一気に身軽になることができます。

工具やパンク修理セットも全部クルマに置いてしまえば、最高に身軽なヒルクライムができます。

トイレ付きの駐車場の例として、大きめの公園峠のチェーン脱着場道の駅あたりを探してみると良いでしょう。 

 

そして・・・エベレスティング達成! と感想

以上の「斜度5%弱程度交通量が少なく、区間内にトイレ付きの駐車場に属するスペースがある」という3条件を満たすルートを探し続け、遠方に1箇所発見することができました。

エベレスティング 勾配

少々わかりづらいですが、大まかなコースプロフィールはこのようになっています。

片道 8kmと、往復回数も肉体的・精神的疲労を感じさせないギリギリを攻めました。

 

そして22回の往復を経て、エベレストの標高を越えることができました!

エベレスティング 記録

総距離は予定通り360 kmほどに抑えることができました。これ以上伸びていたら座面の痛み精神面がヤラれていたかもしれません。絶妙な距離でした。

エベレスティング 往復

サイコンの高度記録を確認すると、かなり面白い形状になっていました。

規則正しくトゲトゲが整列しているログに思わず笑ってしまいます。

 

感想①:GRAILのホバーバーの有用性

ホバーバー ヒルクライム

GRAILの唯一無二の特色であるホバーバーは、このエベレスティングにおいてかなり役に立ったと感じました。

普段は上ハンドルを握る機会があまりなく、正直なところ持て余してしまっていたこのホバーバーですが、今回は大半がヒルクライムということでかなりの長い時間こちらを握っていました。

カーボンのしなりによる振動吸収は、短時間ではそれほど効果を感じません。しかし今回のような長時間のライドになると効力はテキメンでした。

「何時間経っても手の疲れを感じない」ことにより、苦しむことなく20時間以上体重をかけ続けることができ、チャレンジ達成に貢献したと言えます。 しかしかなり正直な話をすると、ホバーバーよりもこの以前の記事で紹介したブラケット用防振ゲルが圧倒的に最高の活躍をしたため、「ホバーバーに感謝!」という感情はあまり生まれませんでした。

それほどまでにこの自作の振動吸収ゲルは効果絶大でした。ブラケットポジションで悩まされていた手のひらの痺れを一切感じさせず、握り心地も向上。今回の敢闘賞です。

このアイデアDIYは今後も私の全てのロードバイクに応用していくことになりそうです。

 

感想②:ヒルクライムにあえてのグラベルロードという選択肢

グラベルロードでヒルクライム

間違いなく、ヒルクライムには6 kg台の軽量なロードバイクが適しています。

一方で私のGRAILは完成車重量8.8kgと決して軽いバイクではありません。しかし今回のチャレンジでは「GRAILでよかったなあ」と思えるポイントをいくつか見つけることができました。

1. アップライトなポジションで疲れない

普通のロードバイクと比べて、グラベルロードは前傾が緩く、アップライトなジオメトリに設計されています。

そのためパワーをかけて平地を高速巡航するには不向きなポジションになりますが、必然的に状態を起こしたポジションで漕ぐことになるヒルクライムでは、むしろ走りやすい体勢をとることができるのです。

 特に今回は20時間を越える超ロングライドですので、疲労の蓄積しにくいアップライトなポジションを取ることが結果的に早く走り切ることに繋がったと感じました。

 

2. 太いタイヤ、エアボリュームによる乗り心地の良さ

Exposure30

私のGRAILは30Cのチューブレスタイヤを履いていますが、これが23cのクリンチャータイヤなら完走はかなり厳しかったでしょう。

と、言えるほどにタイヤのエアボリュームによる振動吸収力には助けられました。

太いタイヤを許容してくれるグラベルロードのタイヤクリアランスに感謝するしかありません。最近は30Cですら空気の量に不満がでてきてしまっているので、次はさらに太いチューブレスタイヤに交換することになりそうです。

チューブレス GRAIL

また、余談ですがチューブレスからクリンチャー(チューブド)に戻ることももう無いと断言できます。

今回のエベレスティングは常に4.0 barというクリンチャー時代からは考えられない低圧で走っていましたが、走りにもたつきが生まれることもなく、ただ転がりの良さを享受でき、しかも振動は全てエアーが受け止めてくれる乗り心地の良さを感じながら登りも下りもクリアすることができていました。

 

感想③ : 反省点は時間の使い方

「全てうまくいったか」と言われればそんなことはなく、特に時間の使い方が甘かったと痛感しています。 

今回の総グロスタイムはなんと28時間と、予定していた24時間以内という目論見を大きく逸脱してしまいました。前日の昼12:00ごろにスタートして、丸一日経過し、ゴールしたのは翌日の夕方16:00と、ただ起きているだけでも疲れてしまうような長時間の戦いでした。

夜間 ライト ブルベ

しかし実際に走行していたのは21時間ほどでしたので、7時間もどこかでタイムロスをしていることになります。

これはひとえに一回の休憩時間を多くとりすぎたためで、特に今回反省したいのは夜間のグダグダ感でした。

1日目の昼間2日目の昼間はコンスタントに6時間で5〜6往復していたのですが、なぜか1日目の夜間は急激にペースダウンして6時間で3往復に。

レザイン サイコン バックライト

(夜の3時ごろに撮った一枚。疲れてきたのかのんびりし始める。)

もちろん暗闇のダウンヒルは安全マージンを取るために多少の減速はしていましたが、それ以上に食事のタイミングで何故か30分近く停滞していたり、やけにゆったりしたペースで登っている時間が多かったようです。

この時間の浪費のシワ寄せは後になってジワジワ効いてきました

2日目の昼12:00ごろ、本来ならもう終わっていてもおかしく無い時間にまだ5往復(5〜6時間相当)が残っていた時の絶望感はなかなか厳しいものがありました。(睡魔にも時々襲われることに)

GRAILと青空

ただ流石に「2回目の日没は絶対に見たくない・・・!(というより気持ち的に耐えきれない)と感じていたのでそこから全力で奮起して、そこからは5往復を4時間で無理やり走りきり、なんとか夕暮れになる前に8,848mを越えることができました。

 

やはり途中で楽をしたぶんだけ、最後に苦しめられることになるのでした。

もし次回のチャレンジがあるのならば、夜間も昼間同様コンスタントにペースを刻み24時間を切らなくてはいけないなと思います。

 

おわりに

想像していたように、エベレスティングは精神力との戦いでした。

しかしこれに打ち勝ったことで、「私は360kmでも走りきれる」「28時間走ることができる」「獲得標高9000m近いライドでも大丈夫」という、幾つもの強力な自信とその裏付けを取ることができました。

もし今後どんなにハードなライドが待っていたとしても、落ち着きをもって挑戦していく姿勢を見せることができるようになったと感じています。

夜間 ライト エベレスティング

やってみて一番思うのは、「同じ道を何度も何度も往復する」という行為には、通常の景色が変わっていく楽しみのあるブルベ、キャノンボールとは一線を画す、精神的修行のような側面があるのではないかということです。

 

やり切った者だけが得られる何かが、誰にでもきっとあるはず、

事実、私は色々と学ばせてもらうことがありました。

もしそれが気になる方は、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

それでは記事をここまで読んでくださった全ての皆さんに、

ありがとうございます。またお会いしましょう!