1つの上り坂を往復して8,848mを登り切るというエベレスティング(EVERESTING)。その無謀と呼べるまでの過酷なチャレンジについて、概要やルールについて簡単にまとめました。
はじめに
皆さまおはようございます。
今回はエベレスティング(EVERSETING)について紹介する記事となっております。
エベレスティングは割と知名度の高いブルベ、キャノンボールに続く、近頃ホットなチャレンジです。(直近で最もホットな話題はPBP = 4年に1度の1200kmブルベでしたね!)
「そもそもエベレスティングが何か知らない」かたや「聞いたことはあるけど、詳しいルールは知らない」というかたはぜひ読んでいってください!
エベレスティングとは? 〜ただ獲得標高を求めるのみ〜
最初にまとめてしまうと、
エベレスティングとは、同じ峠を何度も往復する1回のライドで獲得標高8,848m(エベレストの標高)を達成するチャレンジのことです。
元々は、ジョージ=マロリーというイギリスのサイクリスト ( ”そこに山があるから”で有名な冒険家マロリーの子孫) が1994年にこのチャレンジに成功し、現在はHELLS 500という団体が公的に記録を収集・管理・表彰を行なっています。
エベレスティングを達成するとどうなる?
同じところを何度も往復して8848mを登るなんて、聞いただけではただただ頭のおかしい企画のようですが、このチャレンジを達成すると、以下のような特典があります。
①HELLS 500にSTRAVAの記録を提出すると、"HALL of FAME"の称号がもらえる
ギネス記録のように測定員が記録してくれる訳ではないので、エベレスティングは挑戦者各自のサイコンによって記録し、そのSTRAVAのデータを提出することによってHELLS 500に承認してもらうという形式になっています。
記録が承認されると、"HALL of FAME" すなわち「殿堂入り」の称号が授与され、公式HP(https://everesting.cc/)に名前が刻まれ、そのライドデータも添えて世界中に公開・表彰されます。
2019/09/02 現在のHALL OF FAME (RIDE)は全世界で3,654名。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは・・・どうでしょう、人それぞれですね。私はやはり少ないと感じます。
ちなみに(RIDE)とあるのは、このエベレスティングが自転車だけでなく(RUN)や(VIRTUAL)にも対応しているからです。
ランニングでエベレスティング・・・はフルマラソンでヘロヘロになる私には全く想像がつかない世界ですね・・・。
②ネイビー・グレーストライプのジャージの購入権
(出典:https://hells500store.com/collections/navy-grey-stripe/products/navy-grey-stripe-jersey)
エベレスティングの記録が承認されると、HELLS 500からクライマー憧れ(らしい)のグレーストライプジャージが買えるようになります。
このジャージの存在は初めて知りましたが、確かにこのジャージを着るだけで知る人からは一目置かれそうですね。
特典は主に以上ですが、人によってSNSで自慢できることや、箔をつけることができることなど・・・色々思惑はあると思います。しかし最終的に自己満足の世界であることは間違いないでしょう。
エベレスティングのルールを知ろう 〜自由なようで意外とシビア〜
元々エベレスティングは個人競技にすぎないためそれ自体にルールは存在しませんが、HELLS 500に承認されるためにはいくつかの取り決めを守る必要があります。
まずブルベとは異なり、エベレスティングには時間制限がありません。
それなら長い休息を何度もとることでエベレスティングを何日間に分割し、時間をかけさえすれば誰でもクリアできるではないか、と思うかもしれません。しかしそう簡単にいかないように、
1, ONE ACTIVITY. NO SLEEP. (1回のアクティビティで完遂せよ。睡眠は禁止。)
というルールが設定されています。
人間が一睡もせずにワークアウトできる時間はだいたい決まってくるので、事実上の制限時間が存在することになります。
このルールが存在することによって、時間をかければかけるほど達成が厳しくなってくるので、なるべく手短に、できれば24時間以内には終わらせたいところです。
2, ONE HILL. ANYWHERE IN THE WORLD. (丘、山、私道、橋、どこでもOK)
エベレスティングに挑戦するルートは峠である必要がなく、獲得標高さえ稼ぐことができるなら、基本的にどんな場所でも良いとされています。
これがエベレスティングの最も面白いところで、斜度と距離、カーブや交通量、休息ポイントの配置などを挑戦者が知恵を絞ることで、自分にとって最も都合の良い条件を選ぶことができるのです。
例えばこんな登坂ルートがあったとして、
挑戦者はこの最も距離の短いルートを選ぶことで、往復回数・総走行距離を抑えることができます。
しかしそれだけ平均勾配も増加するので、筋肉の負担を考えなくてはいけません。
一方で、以下のルートだと山頂まで行かないこんな(↓)ルートを選ぶこともできます。
しかし上のものと比較して獲得標高が伸びず、それだけ往復回数が増えてしまいます。
また、平地を走る範囲が長いため、獲得標高を稼げない無駄な時間が発生することになり、時間のロスに繋がります。
ですが視点を変えれば、このルートでは始点にコンビニを置くことで、毎回の休息や補給食の確保、トイレなどの恩恵を受けることができます。
また、山頂付近の急傾斜(ブレーキを多用しなくてはいけないハードな下り)をカットすることによって、ダウンヒルのストレス緩和とブレーキによる位置エネルギーロスを防ぐことができます。
このようにルート設定によってエベレスティングの難易度を大きく変化させることができ、この選定が最も重要だと言えるでしょう。
3, Single Clime. (単一の登りと下り)
このルールによって、ループしたルートを設定することはできません。
なぜループが禁止されているのか?と思いましたが、おそらくこれは「下りやすさに特化した下り坂を使うことで、かなり楽ができてしまうから」でしょう。
例えばジェットコースターのようにアップダウンを繰り返しながら下る坂は、特に漕がなくとも下りながら位置エネルギーに任せるだけで獲得標高が稼げてしまいます。
逆に、ジェットコースターの坂を登る場合では、ただの登坂よりも距離が伸びることになるのでロスが多くなります。ただの往復ではこのように登りと下りでメリット・デメリットが相殺されるので問題ありません。
しかし、もしもループが利用できてしまうと登りはガッツリ傾斜の上り坂 A、下りは獲得標高の稼げるジェットコースター坂 Bというあまりに快適なアクティビティになってしまうため、当初の趣旨に反するということでループは禁止されているのでしょう。
(しかし、HPで公開している達成者のルートにちらほらループがあることも・・・。公式がうっかり見落としているのか、それともそこまで審査が厳しくないのか・・・。)
また、このルールによって「山頂を一旦越えて、また逆側から登ってくる」というルートも封じられています。
このルートは不正ではありませんが、1つの登りにつき1つのエベレスティングという大原則に乗っ取って「2つの別々のエベレスティングに同時に挑戦している」扱いになってしまいます。
つまり獲得標高は合算されず、それぞれの登りで別々に8,848mを達成、つまり合計17,696mを登らされるハメになります。
(実はエベレスティングの称号には通常のシングルより上にダブル、トリプルが続きます。恐ろしい世界です。)
よくルールの英文
"an allowance for up to 2 hours for each ‘subsequent’ Everesting exists."
を「1回登るごとに2時間までの睡眠が認められている」と勘違いしている人もいますが、おそらくこれは前述の「1回目のエベレスティング(シングル)」と「2回目のエベレスティング(ダブル)」の間のことで、シングル中の睡眠はNGなので誤解のないようにしましょう。
(ただし記録の承認ではこのへんユルユルな気がします。そもそもサイコンのログだけでは一睡もしていないかどうかなんて判断できませんからね。)
当ブログもエベレスティングに挑戦!
ということで、当ブログの管理人もこの9月にエベレスティングに挑戦することにいたしました!
もともと今年は600kmブルベに興味があったのですが、今回はそれよりもこのエベレスティングに強く惹かれてしまったので、計画変更となりました。
すでに装備・ルート選定は終了しているので、あとは簡単なトレーニングと試走を繰り返すのみです。(本番の総距離は450km程度になる予定です。)
「エベレスティングのための装備とは?」「エベレスティングに最適なルートはどう選べば良いのか?」については別の記事にまとめて今後投稿いたします。
ブルベと全く異なった観点から準備が必要なため、割と目新しい内容にできると思います。
おわりに
今回はエベレスティング(EVERESTING)の内容やルールについてまとめました。
実際に挑戦した他の方々のブログやSNSを拝見したところ、成功談よりも失敗や断念しているチャレンジの方が圧倒的に多く、やはり一筋縄ではいかないようです。
日本人の達成者、ホールオブフェイムは現在53名と、かなり少ないように感じます。
今月末のチャレンジで、日本人 54(55)人目のHALL of FAMEを目指します!
もし宜しければ応援よろしくお願いいたします。
それでは記事をここまで読んでくださった全ての皆さんに、
ありがとうございます!またお会いしましょう!
(後日達成いたしました。)