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ショートサドルが痛い?最終兵器・女性用パワーサドルが最高だった話

ショートノーズサドル パワー

ショートノーズサドルの定番、スペシャライズド・パワー。坐骨が擦れる痛みを解決するため、女性用のパワーことMIMICを購入しレビューを行いました。

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はじめに

皆さま、"ショートノーズサドル" 、使ってますか?

私感ですが、ショートサドルはここ数年で一気に市民権を得てきたと感じます。一度も使ったことがないかたでも、多少なりとも興味がお有りなのではないでしょうか。

この記事は「私がPOWERサドルをやめたわけ」そして「私が女性用POWERサドルをおすすめするわけ」に焦点を当てていきたいと思います。ぜひお付き合いください!

 

サドル沼の終着点・ショートノーズサドル

そもそもショートノーズサドルとは?というところからですが、簡単に言ってしまえば「(伝統的な形状よりも) 短いサドル」です。

より具体的なお話は以前の記事にまとめてありますのでこの機会にどうぞ。

過去記事のタイトル通り、私がこれまでCANYON GRAILに取り付けていたのもショートノーズサドルでした。

グラベルロード ショートノーズサドル
実際に半年ほど使ってみての感想は、

・まずとにかく、力が掛けやすい!

・(ノーズが短いので) 内股が擦れない

・骨盤が安定する!

 の3つですね。「速く走る」ためのとにかく堅実なサドルであったと言えます。

 

スペシャライズド・パワーは本当に最高のショートサドルなのか?

specialized power

(出典:https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g27116-1503/)

私が使っていたSPECIALIZEDPOWERというサドルはショートサドル界では最も有名な製品です。

知名度もさることながら、完成度もナンバーワンと言っても過言ではないでしょう。

なにしろスペシャライズドは世界の3本の指に入るトップメーカーです。そこが本気で開発をしたものに間違いはないでしょう。

実際、同社は独自の"BODY GEOMETRY SYSTEM"を謳い、人間工学に基づいた研究をしています。この製品ラインは長年にわたって世界中のライダーたちに支持されています。

ともかく、ショートサドルの筆頭は今も昔もスペシャのパワー。もっとも多くの人に受け入れられているショートサドルでしょう。

 

POWER:他のショートサドルにはない「安定感」がウリ

さて私が思うに、POWERの特長は、まるで「お尻が手のひらに支えられている」かのようなフィット感ではないでしょうか。

人間のお尻の形を計算し、それに最適化した座面です。お尻が安定することでよりペダリングがしやすく力をかけやすくなります。

桜 ロードバイク 花見
ところで、"'10年代最強のレーサー"として名高いあのクリス・フルームも、実はPOWERの愛用者だったということはロードレースファンの間で有名な話です。

(スポンサーの関係で他社の製品は使ってはいけないことになっているので、スペシャのロゴを黒く塗りつぶした私物を使用していました。)

 

もちろん合わない人も。POWERは決して万能サドルではない

2019年現在、スペシャライズドの完成車にはほとんどPOWERがアッセンブルされています。

例外的に、廉価モデルは安いレクリエーションサドルだったり、最軽量のヒルクライミングバイク(=Sタマ)は軽量サドルのToupeだったりします。しかし基本はPOWERです。

スペシャ 完成車

(出典:https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/e/eROAD/)

つまりメーカーとしても、「POWERこそがが万人受けするサドル」で、決して一部のシリアスレーサー向けの商品ではないと考えているということなんですね。

 

ところが色々な方の愛車写真を見てみると、この完成車付属のPOWERからわざわざ交換していることも多く見受けられることに気づきます。

例えば日本最大級の市民レース:ツールドおきなわの今年の優勝者である紺野選手は、スペシャライズドの別モデルであるトゥーペわざわざ交換しているそうです。

紺野選手 サドル

紺野元汰 選手(SBC Vertex Racing Team)

(出典:https://cyclist.sanspo.com/437178)

UCIワールドチームでスペシャのバイク供給を受けているトッププロ(ボーラ・クイックステップ)の選手も、よく注目するとPOWERではないサドルに交換しているケースがちらほら確認できます。

やはりPOWERといえども、全ての人の好みに合致し、その欲求を満たすことはできないようです。

 

お尻の内側が腫れて数日痛い・・・もしかしてPOWERが合わない?

GRAIL POWER MIMIIC

私も購入してしばらくは「最高のサドルだ!」と思っていたのですが、1週間もするとある違和感が。

 

100kmくらいの午前ライドの後だったでしょうか。「あー気持ちよかった〜」と程よい

疲労感に包まれて、自宅のお風呂で休もうとしていたのです。ところが湯船に浸かった

瞬間、尻裏にヒリッとした鋭い痛みがあったんですね。

突然の痛みに慌てて痛みのあった部分を触ってみると、指でなぞって分かるくらいのぷっくりとした腫れがあることに気がつきました。

サドル 痛み 場所

(赤い丸で囲った)尻と太ももの付け根付近で、股のいちばん内側の左右に腫れ痕が。

その時は「ポジションがズレて変に前乗りになってたのかな」とだけ考え、サドル位置を数ミリ動かして調整して解決した気になりました。

次の日には痛みが無くなってなっていたので全く気にせずライドに出発。しかしライド後には、また同じ箇所が腫れて痛くなっていることに気づきます。

GRAIL ロングライド

こんな繰り返しを1,2週間繰り返したある日、サドルに跨っていざ出発!という、ついに「最初からサドルが痛くて乗れない」という症状が勃発しました。

尻を確認してみると、長いあいだ肌を洗濯バサミでつままれたかのよう細長の内出血の痕が。どうやら慢性的に痛めていたせいで腫れが引かなくなってしまったようでした。

その日からは痛みがエンドレスです。一日で150km漕いだり、50kmを二日連続で漕いだりすると痛くなってたまりません。

休息日を空ければ回復していきますが、根本的に位置や傾きを調整してみても変わらずに、最終的にお手上げです。

 

パワーから初心者向けサドルに交換・・・。

仕方がないので、POWERの前まで3年間以上使っていたスペシャのレクリエーショナルサドル(完成車付属の安物)に取り替えて運用することにしました。

Body Geometry Bridge Saddle
実は19年9月のエベレスティングに挑戦した際には、すでにこの安サドルでした。

エベレスティング サドル

これでとりあえず尻の痛みは解決しましたが、やはり安サドルは重く、ダンシングのキレが悪くなります

それにゲルパッドがやたらと厚いため座面が膨らんだ曲面になります。お尻の包まれる感が無くなるので、POWERと比べると安定感が足りません。

もちろんノーズが短くないので、力の掛けやすさもPOWERに遠く及びません。

Body Geometry Bridge Saddle weight

(重量は311g。300gを超えると立派な重量級サドルです。)

なぜPOWERは合わなかったのか?原因からNEWサドルを探す!

私にPOWERが合わなかった理由、それはすでに私自身の言葉で過去の記事に書いてありました。 

POWERのファーストインプレッションで「アップライトなポジションで乗ると座骨がぶつかる」と紹介していました。

power 座骨 痛み

このぶつかる場所と、今回痛くなった尻裏の場所は極めて近い位置にあります。

ところが前傾姿勢を深めていくと、このぶつかる感覚がスッと消えていきます。つまり「POWERはある程度の前傾姿勢向き」だったわけですね。(尻の形状による個人差があります)

ところが私のCANYON GRAILグラベルロードです。ジオメトリが前傾姿勢に向いていません

GRAIL グラベル ダート

むしろアップライトなポジションで気楽に乗るほうが向いているバイクです。

加えて私のGRAILはSサイズ(サイズ54相当:身長175cm)と、私の脚の長さの許容ギリギリです。そのためシートポストを伸ばして落差を作る、なんてことがあまりできません。必然的に楽なポジションになってしまいます

結果、座骨が立ってしまうためにサドルに尻肉が擦れたり挟まったりしてダメージが蓄積してしまっていたわけですね。

 つまり、「座骨が立っていても、尻の肉が引っかからない形状をしている」ような新たなショートサドルを探す必要がありそうです。 

 

男性でも女性用サドルはOK?POWER MIMICインプレ!

POWER MIMIC

そうして最終的に行き着いたのが、同じくスペシャライズドのパワーミミックです。

このPOWER with MIMICは18年11月、つまりちょうど1年前に発売された新しい製品です。

特徴は何と言っても穴あきサドルの穴を埋めてしまったということ。

power mimic クッション

(出典:https://www.specialized-onlinestore.jp/contents/blog/detail/427)

 そして穴だった場所には柔らかいTPR素材(エラストマー樹脂)が埋め込まれています。これは上の図の黄色いパーツです。

 

なお、このサドルには3つのグレードがあり、上から

  • S-WORKS・・・カーボンレール (¥28,600)
  • (無印) EXPERT・・・チタンレール (¥16,500)
  • (無印) COMP・・・クロモリレール (¥14,300)

となっています。私が購入したのはもっとも廉価なCOMPです。重量にこだわるかたはEXPERT、S-WORKSグレードがおすすめです。(カーボンレールだけはカーボン用ヤグラが必要になります。)

 

Women's POWER が Men's POWER より優れている点

それではなぜ女性用パワーなのか?ということについて説明していきます。

①穴まわりの傾斜が緩やか

まずは私の尻の痛みの発生原因であるココ。普通のPOWERは穴に向かって一気にストンと落ちていくような座面になっているのです。

POWER 穴 擦れ

この急な段差が尻肉に引っかかるみたいです。それでいてココの樹脂はけっこう硬い

ところがパワーミミックは穴が無いからか、ここの傾斜が比較的緩やかです。

POWER MIMIC 擦れ

これで尻肉が挟まれることがありません。しかも普通のPOWERよりも微妙にやわらかめです。この些細な変化だけでも痛み問題は一気に解決!

 

②ノーズがとにかくやわらかい

もともとPOWERはショートノーズなので、ノーズ部分に股間が圧迫されることは基本的にありません。

しかし、深い前傾をとるときにはその限りではありません。しかもシュッとした形状が災いしてか、先端に力がかかると股間に食い込みます。それにけっこう硬いです。

POWER ノーズ

一方でMIMICはノーズ部分をまるごとEVAフォームで包んでしまいました。

POWER MIMIC ノーズ

このEVAフォームがとにかく気持ちいい。ずっと触っていたくなるような、絶妙なフカフカ感なのです。

例えるなら高級な枕低反発クッションのようです。指でグッと力を込めて押すと、

POWER 女性 やわらかさ

このようにしばらく凹み跡が残ります。初めて触ったときは「なんだこれは・・・。」と感じましたね。

ショートサドル 低反発

これで前傾時の痛みも大幅に軽減できます。

これは女性用サドルなので、女性の会陰部への圧迫感を減らすためにこのような素材になっているようです。

逆に男性だと、女性にはない陰嚢や陰茎がこのノーズに接触します。これは穴が空いていないので仕方がないですね。

しかしこれだけ柔らかい素材なので、圧迫感もそれほど気にならない人が多いでしょう。

 

③POWER発売から数年。単純改良されたサドル形状:ウイングの先細り

最後にサドルそのものの形状です。ウイング部がPOWERよりも細くなっています。

POWER ウイング

これは「女性用だから」ではなく、純粋な「POWERサドルとしてのモデルチェンジバージョンアップ」です。

通常のPOWERにおいて、「ペダリングするとウイングと、腿の裏が擦れる」という報告が結構あったようで、それを改善すべくウイング形状をシュッとさせた、ということのようです。

POWERは人気モデルとはいえもう何年もモデルチェンジをしていません

よって後発として、より蓄積された研究データを使ってMIMICが誕生したのならば、このウイング部の進化は単純に上位互換だと言えそうです。

(私自身はウイング部の擦れには困っていませんでしたし、残念ながら今まで使っていたPOWERと今回のMIMICでサドルサイズを変更したため単純な比較はできていません。)

 

GRAILのサドルを交換しよう!POWERからPOWER MIMICへ

説明は以上です。あとは実際に使ってみてインプレをしていきましょう。

改めて WMN POWER W/MIIMIC COMPの全体像です。カーボンレールのS-WOKSモデルではない、クロモリレールの安いモデルを買いました。

POWER MIMIC 購入

スペシャライズドの製品はAmazon海外通販では一切購入できないことになっています。正式な認可を受けた販売店か、スペシャジャパンの代理店、または公式通販オンラインストアのどれかで買うしかありません。

代理店や公式通販では基本的に定価販売しかしていません。定価は¥16,500です。

お高い・・・。

ところが今回、近所のサイクルショップ(スペシャ認可店)にたまたま足を運んだところ在庫処分セールをやっておりまして、¥16,500 →(型落ち年度品)¥14,050 →(セール特価)¥11,000と、とてもスペシャの製品とは思えない値引率で売っており、一瞬も迷いなく購入いたしました。

パワーサドル 重量 ミミック

重量は217gでした。POWERは230gだったので、クッションが増えたのになぜか軽量化になっていますね。本当に何故なのでしょうか。

世の中の軽量サドルといえば120gとか150g、一部の超軽量サドルに至っては90g台とかもありますが、ロングライドの快適性も考えた上で、この200g前後という重量のサドルが個人的には一番バランスがいいと思っています。

サドル 交換 GRAIL

お次は取り付けです。六角レンチを使っていきます。

これはCANYON純正のシートポストです。ヤグラのボルトは前後ともに下側から締め付けていくタイプなので、サドルに穴が空いてようが無かろうが関係ありません。

CAYNON シートポスト ヤグラ

上下でボルトを締め込んでいくタイプのものだと、穴なしサドルだと作業性が落ちますね。(私の以前のグラベルロードがそうでした。)

今回購入したサドル幅は155mmです。女性用だけあって、MIMICは143mm、155mmに加えて168mmという幅広サイズも展開されています。お尻の大きな男性にもこれは嬉しいのではないでしょうか。

POWERサドル幅

以前のPOWERは143mmを使っていましたが、手首の幅から坐骨幅を測るという面白い計測方法(WTB公式: https://www.wtb.com/pages/fit-right-system)によると私の坐骨幅が120mmとなかなかに幅広らしいとわかったので、今回は155mmにしてみました。

結果として、幅を変えたことによる違いあまり分からなかったですね。「坐骨がサドルの曲面によりジャストフィット・・・」するかと思っていたのですが、私の尻は結構鈍感なようで、どちらのサドル幅も同様に許容してしまいました。

サドル 取り付け ボルト

座面を水平からやや前下がりにしてフィッティングが終わりました。この微妙な前傾があると会陰部の圧迫感が大幅に減ります。

女性用ショートサドルのインプレ。これが私のサドル沼の終着点だ!

POWER MIMICに交換してから300kmほど走りました。

ショートサドル インプレ おすすめ

結論として、

完璧。もうこれ以上のサドルは求めない・・・!

という評価になりました。そもそも普通のPOWERでもその性能自体はいたく気に入ってたので、減点ポイントだった痛み問題を解決した時点でこのPOWER  MIMICが最高のサドルになることは自明でした。

power mimic 表面

目論見通り、尻の痛みはなくなりました。さらに、女性用だからといって男性特有の陰嚢の圧迫もなく、問題なく使えています。

MIMICの表面は滑り止めのように衣服に張り付くような素材です。これがビブとサドルの擦れを抑えてくれるので、大きな力が掛けやすい。

しかし「サドルはもっとツルツル滑る方がいい!」という人も多いので、この点では「ツルツルのPOWER」と「ザラザラのPOWER MIMIC」は好みが分かれると言えそうです。

まとめ | 女性用POWERはPOWER好きの男性の最後の砦になる

power mimic カラー

POWERが好き」「でも微妙にお尻が合わなくて痛い・・・。」そんな男性に一度試してみることをオススメしたい。MIMICはそんなPOWERサドルでした。

私にとってこのサドルは力の掛けやすさ股間の血流の開放感はパワーそのまま、それでいて痛みを発生させる要因が取り除かれており、いいとこ取りをした気分です。

あとはクッションを多用していたり、ウイングが改良されていたり、(何故か)重量も軽かったり。あっさりサドル沼のゴールを見つけてしまいました。

 

サドル探しの旅は終了です。あと気になるサドルといえば、今年のユーロバイクで発表された「3Dプリンターでカーボン成型する」POWER Mirrorサドルくらいでしょうか。

POWER Mirror

(出典:https://www.specialized.com/jp/ja/mirror-technology)

まだプロ選手に供給されてデータをとっている段階とのことですが、来年か再来年には発売されるのではないかと思っています。

ただしオーダーメイドかもしれないという話と、製造技術の特許料が高そうということを鑑みて、お値段は4万で済まないかもしれませんね。これで3万以内ならぜひ買ってみたいものですが。

それと、あとはPlologo (プロロゴ)Dimention (ディメンション)ですね。「POWERは高いし、通販で気軽に買えないから別の人気ショートサドルを試してみたいよ!」というかたの需要を満たしています。

プロロゴのディメンションは179gとPOWERより軽く、価格も安いです。

愛用している人を結構見かけるので、私も一度試してみたいなと考えています。

それでは記事をここまで読んでくださった全ての皆さんに、

ありがとうございます。またお会いしましょう!

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