GRAILのヘッド調整とガタ取りを行いました。CANYONのステム一体型ハンドルのロードバイクならではのメンテナンス方法をまとめています。
- はじめに
- ヘッドがガタつく?それって整備不良かも!
- はじめての組み立て時、ここが間違っていた
- GRAILの変わったパーツたち
- ステム一体型ハンドルの正しい組み立て方(CANYON編)
- もしライド先でヘッドが緩んだら? T-6トルクスレンチは手に入るの?
- おわりに
はじめに
皆さまおはようございます。
今回は、GRAILのハンドル周りのメンテナンスを紹介いたします。
CANYONは個人輸入専門のメーカーなのでほとんどの整備は自分でできるようになっていなくてはいけません。
過去にロードバイクを所有していても、規格は次々と変わっていきますし、バイクによって特殊な工具が必要なこともあるので油断はできません。
継続した情報収拾が一番大事なのかもしれません。
それではみていきましょう。
ヘッドがガタつく?それって整備不良かも!
もう2ヶ月以上前の話になってしまうのですが、GRAILを組み立ててから数週間後にある異変が訪れました。
それはヘッドのガタつきです。
いつも通りにGRAILに乗っていたところ、ブレーキをかけた時のフィーリングが何かおかしいことに気がつきました。
言葉で説明すると、「ブレーキで制動をかけると、握っていたハンドルが小刻みに前後振動する」といった具合です。
この時点でヘッドにガタが出ていることを疑いはしましたが、今まで何年間もロードバイクに乗ってきて走行中に突然ヘッドのネジが緩んだなんて経験はありませんでしたし、そもそもヘッドの調整はロードバイクの整備の中でもかなり簡単な部類なので失敗しているはずがないと思っていました。
(以前の整備の様子)
ですので、「ここの路面の凸凹が特殊なのかな?」と勝手に推測してそのまま走り続けてしまいました。
その後100kmほど走ったところで明らかな異変に気付きました。
もはや制動時だけでなく、常にフロントフォークが前後に動くようになりました。
GRAILのフォークはカーボンコラムですので、このまま走り続けるとコラムに圧が掛かり間違いなく破断します。ですので急いで停車して整備を開始しました。
はじめての組み立て時、ここが間違っていた
組み立ての記事でも軽く触れていましたが、結論を言うと私はここでヘッドのネジを1つ閉め忘れていました。
このミスが今回のヘッドのガタに直結していました。
まずは簡単に、前回GRAILをどのように組み立てたのかをおさらいします。
ハンドルが分離した状態で届くので、この「FSインサート」と呼ばれるパーツをステムの内側に埋め込みます。
このインサートをネジで押していくことでハンドルとコラムを固定する仕組みです。これならカーボンコラムをネジで締め込みすぎて破断・・・というリスクを少なくできますね。
次にこの説明書通りにスペーサーとハンドル、トップキャップの順にコラムに通していきました。
トップチューブ〜ハンドルの一直線(通称:ツライチ)が好みなので、トップキャップ側のスペーサーは入れていません。
トップキャップをトップキャップボルトで締め込みます。ここの指定トルクは2Nとかなり控えめです。
最後に、ハンドルを少し横に曲げると現れるステム調節ネジを7Nで均等に締め込んでおしまいでした。
普通のロードバイクならこの手順で問題ないのですが、CANYONのロードバイク(ステム一体型バイクのみ?)では実はもう一手間必要なのです。
(公式の組み当て動画では省略されています。)
それはスペーサーの下のこのパーツを締め込むことです。
このパーツはこちらのBOMの26番です。
パーツ名は「Transition plate low (EP0662-01)」です。
なぜ公式の組み立て動画でもこのパーツに触れていないのかと言いますと、「工場出荷時にすでに最適な位置で固定されているため、組み立て時にいじる必要がないから」であると推測されます。
しかし今回の事情から考えるに、私のGRAILではこの工場出荷時の締め込みが甘かったのでしょう。
もちろんCANYONが不親切だというわけではなく、開封時にGRAILに取り付けられているタグ型簡易説明書にもこのTransitionプレート(長いので以下、Tプレートと呼称します)を締めるように書いてあります。
GRAILの変わったパーツたち
それではTプレートとはどんなパーツなのかについてご紹介いたします。
まずはステムのトップキャップボルトを外します。
(このボルトは2代目です。特殊なボルトのネジ穴を潰してしまった時の代品入手方法は、以前の記事でご紹介しています。)
次にハンドルをすっぽ抜きます。オイルラインとワイヤーが痛まないようになるべくケーブルは曲げない方が良いでしょう。
ステム下のスペーサーを外すとTプレートとご対面です。
このTプレートは一般的な六角レンチ(アーレンキー)では締めることができません。
必要なのは、初期セットについてきたトルクスレンチです。
これがトルクスレンチです。自転車の整備ではほぼお目にかかることがない「T-6」という細い星型の先端形状をしています。
(「T-25」や「T-30」といった大きな星型トルクスレンチが6穴ディスクローターの取り付けに登場したりします。)
このトルクスレンチをTプレートのネジ穴に差し込んで回すことで、コラムを下からも固定できるというわけです。
もしかすると前述の「FSインサート」だけでは固定・保持力が足りないのでこのTプレートが必要なのかもしれません。
今回のお話ついでに、GRAILのヘッドの変わった構造についても触れておきます。(整備に必要)
ロードバイクのヘッドには上下にベアリングが埋め込まれているのはご存知だと思いますが、GRAILの場合ベアリングの上部にもう一つパーツが入っております。
それがこの写真の上側の「Cockpit bumper」というパーツです。バンパーという名前の通り、ベアリングとフレームの「緩衝材」です。
GRAILのベアリング径はコラムの太さよりも若干太いため、このバンパーを入れ忘れるとハンドルが固定されず、前後左右にガックンガックン揺れます。
それこそTプレートの閉め忘れよりもはるかに大ダメージです。
表裏を間違えてもダメです。一回だけ間違えた状態で走ってエライ目に遭いました。(コラム破断するかと思いました)
ここからは推測なのですが、このバンパーはグラベルロードとしてのGRAILの振動吸収に一役買っているのではないか?という仮説をご紹介いたします。(間違えていたら後日訂正いたします。)
ジャストサイズのベアリングの場合、ベアリングとコラムはがっちりと組み合わさって固定されているので、フォークはどこにも動きません。
しかしオーバーサイズのベアリングを使って間にバンパーを挟む状態だと、フォークは固定されているとはいえ、パンバーは弾力のある樹脂製なので微妙な変形を許します。
大げさに表現すると、路面の振動でバンパーが潰されて、(ライダーに違和感を与えないレベルで)振動を吸収しているのでは?という仮説です。
こんなことを考えたのは、このバンパーがいかにも経年劣化が早そうな樹脂で作られていたからです。
見たところこのバンパー、5年間は持ちそうにありません。正直ほぼ新品の今でも気をつけて取り外しをしないとプチっと切れてしまいそうになります。
ヘッドの整備をよくする人であれば2,3年も怪しいかもしれません。
ですので、わざわざこんなにも柔らかく壊れやすい素材で作ったのであれば、CANYONのデザイナーはこのバンパーに振動吸収性も見込んでいたのではないかと邪推したわけです。
正直違う気がしますが、とりあえず誰かに指摘を受けるまではそう思い込んでおくことにします。
ちなみに、上側のベアリングがTプレートで玉押し調整されるとするならば、下側のベアリングの玉押し調整はヘッドチューブをひっくり返した裏側にあるこのネジを締めることで行います。
この辺りもGRAILの、というよりCANYONのロードバイクの面白い特徴ですね。
ステム一体型ハンドルの正しい組み立て方(CANYON編)
さて、本題のヘッドの整備に戻ります。
以前、カーボンコラムのヘッド調整のメカニズムは簡単に説明しました。
それに沿って今回も整備していきます。
①まずは、ヘッドキャップ、ステム、Tプレートのすべてのネジを完全に緩めます。
②ヘッドキャップボルトを締めます。これによりプレッシャーアンカーが締まってコラムを引き上げることができます。(ガタが消えます)
③Tプレートを締め込みます。これでコラムの下部は固定されます。
このようにハンドルを曲げるとスペーサーの穴からトルクスレンチが差し込めるようになっています。
④ステム裏の2つのネジを締めます。これでコラムは②で引き上げた位置で固定されます。
もちろん、ガタを釣ることだけに注力しすぎるとフォークがあらぬ方向を向いてしまうので、ホイールがまっすぐになるように固定しながら行います。
このホイールのセンター合わせには、地味にレックマウントのサイコンマウントが本当に地味にいい仕事をしてくれます。
センター合わせが楽チンです。
さて結局普通のロードバイクのヘッド調節とほとんど変わりありませんが、前述のとおりGARILのステム調節ネジはハンドルを少し曲げないと締められないので、ハンドルの固定が少し面倒だなと思うこともあります。
また、ヘッド調整をするときなどに、たまにハンドルを外してコラムにカーボン用グリスを塗ってあげましょう。固定力が上がります。
もしライド先でヘッドが緩んだら? T-6トルクスレンチは手に入るの?
私がヘッドの緩みに気付いたのが自宅から200km離れた田舎道だったように、出先でステムのガタが発生することもあり得ます。
ですので、付属していたT-6トルクスレンチは基本的に携帯工具入れに収納して常に持っておくべきでしょう。
使う機会はもしかすると1回もないかもしれませんが、そこまで気になるサイズでもないので、「いざ」という時のために携帯をお勧めいたします。
ところで前述のトラブル時に私はこのレンチを持っていなかったわけですが、幸い近くにホームセンターがあり代用品を購入することができました。
こちらがその時に緊急用として購入したトルクスレンチです。T-6というメジャーではない規格のトルクスレンチですが、そこそこ大きめのホームセンターだったので普通に置いてありました。
もし自宅に忘れてしまった場合でも、ホームセンターを見つければ最悪なんとかなるかも、ということです。
おわりに
今回はGRAILのヘッド周りのメンテナンスを行いました。
やはりCANYONのユーザーになるということは、いろいろなメンテナンスの知識が必要になるということでしょう。
しかし今の時代、ネットを使えば先駆者の方々の情報を拾い集めることができ全く対応できないということは少なく、全くの初心者であってもCANYONを最初の1台にすることが可能であると私は考えます。
大事なのは、自分から調べにいく行動力なのではないでしょうか。
私は幸いブログの管理人として情報を発信する側の役割を受け持てているので、情報を収集しつつもそれを読者の皆さまに最大限還元できるような自転車ライフを送っていけるよう努力してまいります。
今後ともぜひご愛読のほどよろしくお願いいたします。
それでは当ブログに興味をもち、記事をここまで読んでくださった全ての皆さんに、
ありがとうございます!またお会いしましょう!
(おすすめ記事)